今日は父が入院している川崎の病院へ母と奥さんと3人で行ってきた。
一昨日から胆石の手術のために入院している父。
胆石と言えば非常にポピュラーな病気だし、基本的に大したことはないのだが
父は今から23年前に大病を患い、大手術の末に胃を全部取ってしまっているので
普通の人とは状況が少し違うらしい。
23年前、僕は小学2年生だった。入院している父の見舞いに行くのは
なんとなく楽しい思い出として今も残っている。
病室の父は普段より優しい気がしたし、売店でジュースを買ってくれたり
当時僕が好きだったプロレス雑誌を買ってくれたりしたので
見舞いに行くのはちょっとした楽しみになっていたのだ。
あの頃はそんな大変な手術だとはつゆ知らず。
手術当日の日は近くに住んでいた友人の家に弟と一緒に預けられていたらしい。
なんとなく覚えている。それも楽しい思い出だ。
今になってあの頃母はどんな思いでいたのかと想像すると少し胸が痛む。
しかし子供とは実に無邪気なものだ。
あれから23年。また川崎の同じ病院で父は手術を受ける。
病室の父は普段より少し痩せて見えた。もともと僕と同じで痩せてはいるのだが。
家では飲んだくれで偉そうな父もこの病院では一人の患者でしかない。
いつも通りの口調で病院の飯はまずいだの隣の患者のいびきがうるさいだの
いろいろと悪態をついていたがなんとなく強がっているようにも見えて
少しかわいそうに思えた。きっと不安な気持ちを抱えているだろうけど
僕たちの前では決してそんな素振りは見せなかった。
買ってきてあげた競馬雑誌を見て、有馬記念までには退院するとふざけていた。
僕は病室のあの独特の匂いのせいで少し不安になっていた。
普段から父とはあまり喋らない僕だが、こういうときは余計になんて声をかけて
いいのかわからなくて困ってしまう。
でもそんな時、うちの奥さんがうまく場を和ませてくれるのだ。
普段から我が家の潤滑油としてとても活躍してくれている。
母に対してつい冷たい態度をとってしまう僕のことをいつも横で叱ってくれる。
本当に一緒にいてくれてよかった。
今や我が家にとって、なくてはならない存在だ。
今日は主治医から今回の病状や手術の内容の説明をみんなで受けた。
とてもわかりやすい説明だった。こんなに丁寧に説明してくれるものかと少し驚いた。
この主治医は23年前からの付き合いらしく、僕は今回初めて会ったのだが
昔はもう少しスリムだったらしい。今は副院長になり恰幅もよくなったようだ。
この人が23年前、父の命を救ってくれたのかと思うと感謝せずにはいられなかった。
僕は背筋がピンとなる思いで説明を聞いていたのだが、時折難しい話の中で
くだらない冗談を入れてくるので笑うタイミングが難しかった。
でもこの人は名医だなと直感した。少し安心した。あとはこの人にまかせるしかない。
明日は手術の日。
今頃父は病室のベッドで何を考えているだろうか?
僕は普段考えもしない父の頭の中を少しだけ想像してみた。
・・・有馬記念のことじゃないよな・・・。
僕のお父さん 仕事で帰らない 僕は長男 涙をこらえてる 雨音が僕らを遠ざける I love you, Daddy
♪僕の父さん / 桑田佳祐